隣述

資金があればまた違ったろうね、いろいろ とはもちろん思うけれども。 でももうそれはいい。 それより、たとえば志路遺耕治の、たしかに褒められたものではないだろうやけくそな一夜のマラソン=詩作が「60年代詩」という暑苦しく、暗く、あんまりにもあんま…

「VAMPIRE=SUN」(仮の誌名)

「まだいるな、『魂』とかほざく奴がさ」(岩尾忍「0cal soul」)。どんな正当性も主張することなく、私にとっての前衛短歌とは「魂」を「ほざいたやつ」からの通信です。「たましひ」という語彙を自分の歌にじかに入れることを恐れなかった者のことで、「た…

歌のネグリチュード、短歌のノン・ネグリチュード

「詩的だね。」と思いきって言った。 「それは、」と間木は横を向いたまま応えた。「絵を悪く言うときに使う言葉だ。」 (安部公房「水中都市」p.249、『水中都市・デンドロカカリヤ』、新潮文庫、新潮社、1973年) 詩は、人間が言葉に臨んで執り行うひとつ…

風が風を……

現代詩をひとはどこから読みはじめるのだろう。 私には、ふたつのルートがあったと思う。ひとつはウラ・アオゾラブンコやひそやかに綴られた読書サイト、「いん・あうと」「鐘楼」で小笠原鳥類がかいていたあんなにすばらしい詩の話を頼りにして・・・つまり…

継承=後遺症

冬の間、次のツイートを繰り返し参照して考えていた。「詩人は貧乏や逆境に強い」という旨の朝日新聞の記事での野村喜和夫さんのコメントを読んで、「うーん」と首を傾げている。実際、強い人もいるだろうが、それは「詩人」の属性ではなく、世間が「詩人」…

短歌のスポイラー、暴露に享楽があってもないとき

昨年行われたWS「ネタバレの美学」での発表資料にひととおり眼を通した:・高田敦史「謎の現象学: ミステリの鑑賞経験からネタバレを考える」https://drive.google.com/file/d/1o5mS7cAGL6S4ygtGh8N8r3wxz9lVgG6X/view(リンク先はpdf) ・森功次「観賞前に…

ミシディアうさぎは、今夜?

「『してきたことの総和』が未来ではなくなるときに」(http://kyollect.hatenablog.com/entry/2018/11/18/204057)で、中田健太郎にたった一言でも言い返そうとして、疲弊した。そうかいてみて何人が真剣に受けとってくれるものか知れない。単にその圧倒的…

森本平について

★自分だってたかだかインテリゲンチャでしかないことを自覚してるから、というところが小泉義之の文を最後のところで信頼するひとつにはある。だって理論家や批評家や大学教授のひとたちってみんな自分を下から上を撃つ抵抗者に位置づけたがるもんだし、せい…

『忌臭祓い』(奥村真)

メディアマーカーという読書記録をつけるサービスがあって、しばらく前に終わった。10年近く使っていた。ひとなみに「まめ」だった訳だ。けれど読書記録をつけなくなってもなにも変わらないことが判り、ひとの言葉を借りればすっきりした*1。読書記録に対す…

短歌の蚯蚓腫れのグリッサンドに際して

短歌を読むしかたにおいておそらく私が初めに失明をおぼえたのは、歌を音の集まりに再構成した上でその構成音を一個一個取り上げては「この上句のY音の柔和さが(……)」「K音の硬質さ/軽快さが(……)」といったしかたで音を聴取しようとするしかただったの…

ラドヴァン・イヴシック『あの日々のすべてを想い起こせ アンドレ・ブルトン最後の夏』

「素晴らしい。だが同意しない」(安川奈緒)という言葉はただでは言えない。この言葉が寄せられたもともとの文脈がそうだ……し、「傑作だが、重大な問題点がある」とか「ものすごく好きだけどここはどうしても受けつけない」という気分で言いえるものをこえ…

「大杉栄、山口百恵、私の誕生日今日火の匂ひして」(尾崎まゆみ)

頻繁に通る道で路上に面したところに緑色のコンテナのような機材が設置されていて、それには「大変×××」という白い印刷文字が小さく左下にかかれてある。あるとき気づいたのはこの「大変」とは「大宮変電所」の略称だということだけど、そのあとの×××という…

二日前、モダニズム詩についてかきながら実は高貝弘也の初期詩篇のことが思われていた。それも『中二階』ではなくて、もっと以前……時期的には80年代初めの「跳躍」や「玩具箱の喇叭ッ叭」といった作品。「制度」はこれらの詩に習作という術語をあてがうに違…

封殺された「水色のほくろ」のために

10年ほど前、『モダニズム詩集 I』(鶴岡善久編、思潮社、2003年)についてかいた文があって、今日はそれを引っ張り出している。以下ではその当時の文と通信をとりながら、あらためて少しかいてみたい。 毀誉褒貶というよりはるかに、あらかじめ反省的なかま…

同時刻同色(ないわれもないのに)──林市江『銀漢頌』

限定というのはそこでしか観れないこと。パチスロでしか流れない小アニメのことをひどく気にして。そういった場所で、特別の(ともかくも、特別の)アニメを観ることは、いい悪いでなく、私ならたのしくなれない気がするというのはなにへの牽制でもなくて。…

伊藤、比呂美が、松平、修文の歌をほめてるんだよ……!!!! 頭のなかで太字強調された思いを、頭のなかで太字になぞるたのしみをまだ切り離せないまま。 実をいえば、「アルカディア」Iは、衝撃だった。現代の短歌に初めて触れたのである。現代詩とはちがう…

森岡貞香『百乳文』10首選

この海星の場合 港湾に突き出たる concrete のうへにて死せり ※海星(ひとで) われが淵といふ名をもちひむかとおもふ 横切るはひとつ幻影 雑木林の空を飛びながらの産卵はすずめ蛾の種に運命ありき おびくものとしもおもはねど龍の髭のかかふる青き玉に目を…

恋愛はどうでもいいと思ってたけど、いいものもあるのかな、と、どうにか自分にゆるせるだけ思えるようになったのはたぶん二十代もかなりすぎてからで、それはほぼ「学習」によった。漫画とか小説とか。いずれキャラクターを通して、キャラクターが語りたそ…

もう一度言ってくれないか、「短歌ってどう作るんですか」と。ほんとうにもう一度言ってくれないか? いや? そんなものはない。短歌の作り方を指導し、指導されて歌を作れるようになる可能性などあらかじめ廃絶させたところで自分は歌をやっている。要約す…

現代俳句と現代短歌と現代詩とをいっぺんに読み出した。そうに、決まっていた。そう……の筈でもあった。間もなく「いっぺんに」の前に「できるだけ」がつき出し、「思いのうちでは」へまで押し出され、明らかなことは明らかになっていった。詩の華々しさ以上…

たい-いんの日

賛成したのは誰か?:誰が私を逃がしてくれたのですか? 怖い責任論の時間に眼をあけられるひとなら、たとえばそんな問いから始めるべきではないと教えてくれるだろう。あなたの生存は誰かへの贖いとしてのみ描像される必要はないと。無償と有償の終わりない…

耳をふさいでも眠っても

長野は今夜の天気予報によると「所により曇り」らしい(何故長野かと訊かないで欲しい。私にも判らないので)。それを示すアイコンが表示されている。曇りマークの右上にかぶさるようにお月さまマークが乗っている。雲の記号と月の記号がいっしょくたになっ…

ヴァールハイト精神城での一夜が誰かに過ぎて

取り違えること、あるものとほかのものとを取り違える局面の多くについて、短歌を通じて書いてきたような気がする。たまたまだろうか。たぶんそう……いや、そうとも思えない。 まだ何もしてゐないのに時代といふ牙が優しくわれ噛み殺す/荻原裕幸*1 噛み殺す…

寒い海上で

星に願いを投稿したいとはもう思えなくなったとしても、「星に願いを」と書きつける誰かの手の運行には素通りできない気持ちが死なずにある。星そのものに願いとなって投げ込んでいかれたい気持ちがもう死滅したように感じられていて、そんなとき、どこか遠…

エクフラシスが敬愛を敬愛する

「描写」のぼんやりとした広さに気後れしつつ、しばらく前に知ったエクフラシスという修辞に思いをよせていた。といって、この修辞について知ることは少ない。ギリシアの修辞学を通して展開した言葉の技法であること。ホメロスが『イーリアス』でアキレスの…

十月ののんちゃん、季節は名前に英雄

ロラン・バルトに「ロラン」が付くのは、「バルト」と言えばカール・バルトだったから。ジュディス・バトラーに「ジュディス」が付くのは、似た事情もあるが、女性名を有徴化する学界作法による。一律には行かないが、同等にすべき。「柄谷」と書くなら「大…

レーロージュンビゴー

より。 ひとりにつき15首の連作が104人(数え間違いでなければ)分掲載されていました。 見えざれば受話器のかなたまさびしき走者となる言葉選ばむ/秋谷真由美「星匂ふなり」 ※走者(ランナー) 台風の真昼の雲間よりのぞく欲望と等量の紺碧/江畑実「梨の…

文鎮、カタパルト、鈴(452)

両義的な言葉にどうも、後ろ髪を引かれてしまうようだ(正確にはあの意味を思えば、この意味がすぐに後ろ髪を引く、という言葉のしぐさにときめく……と言ったらいいだろうか)。たとえば「最後の人」(ブランショ)という題についてはいつかデリダも書き残し…

早野臺氣『海への会話』

想像で補完できそうなことを省略せず糞真面目に言う。出来事や認識のつながりを露骨な順接表現を使ってわざわざ言ってみる。ということで生まれる言葉の物質性は、「ふくらみてはしる窓の燈しゆんかんの電車であるから高架のこさる」(「旗」)の「であるか…

ちぎりおえたあとで

春にして思う……。冬を? いや、秋まで、かなうなら巻き戻してみたい。十一月、十二月、三月と、セブンイレブンのネットプリントサービスを通じて短歌が印刷された紙を手に入れることが出来た。「全く新しい効能を持つ都市間交通システム(仮称)」( http://…