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カニヴァ

 そしていつか出典が判らなくなって:「私たちは何も感じないものに手をつけるのをやめた」。

 語り手の胸に向かい「頷いて」(“nodding”)いたこの「草」は、「手旗信号」(“semaphore”)のような動き方をする葉を持ち、「神秘的」(“mysteriously”) に頭を振る。心臓=心に何事かを伝えようとしているのか。
JAIRO | 心痛と覚醒 : George Herbert, "Love Unknown"とElizabeth Bishop, "The Weed"

 「膝のところにある心臓がドキンドキンしてくる」と子供は書いて子供は泣きそうだ(灰原とう「冬のヨルガヲ」、『イメイザーの美術3巻』)。知らされるのはそのようなことで、いくつもある心臓のマンションに心の灯がともるのだか心の跡地に心臓が靴を脱いで帰ってくるのだか判りやしない、という思いが心臓/心の古い取り違えをひとにうながしてきたと、想像できるのはそのようなことで。『そのなかに心臓をつくって住みなさい』(瀬戸夏子)。住人と部屋と「住人と部屋」があり、コップと嵐と「コップの中の嵐」と「嵐の中のコップ」があり、上句と下句と(……)。心をつくる秋のはつかぜ、震え上がるような通報。なにが先に来るのかは知らない。

肉体は音のない音符でできた合成語である
ここに書きつけたことの意味が訪れるまで
きゅるきゅると悲しみに襲われながら
すなわち射殺される姿勢で
待機する気力がわたしにはある
わたしは動けなくなるということがあるのだ
(松本邦吉「肉体は星辰の破格である」p.168、『松本邦吉詩集』、思潮社、1985年)

 昼夜、いい角度を通報している。

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