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レーロージュンビゴー

より。


ひとりにつき15首の連作が104人(数え間違いでなければ)分掲載されていました。

見えざれば受話器のかなたまさびしき走者となる言葉選ばむ/秋谷真由美「星匂ふなり」  ※走者(ランナー)
台風の真昼の雲間よりのぞく欲望と等量の紺碧/江畑実「梨の形の詩学
腕組みたることにしも関りて風の中なるジンジャーの丈/加納百合子「真紅の価」  ※腕(かひな) 丈(たけ)
直情の生を支ふる計算にあやめのごとく脳ただれたり/新崎晴子「連翹の笞」
風よふけこひねがふいま花粒の散りて展ぐる黄莚を見む/津上朋子「新雨」
矢車のかなたの空の水浅葱捨ててかがやく言葉ありける/照屋真理子「恋林檎」
蛍の生死ことしいかにと来し川は帰命帰命とつぶやきて行く/森山しのぶ「水無月乙女」
アメリカにピエロの学校あるといふ霙の中にふとおもひいづ/柳井瑠璃「実朝の留守」
竹の秋膚は切れど血の出づること無きほどの男飼ひたし/矢島昭彦「桔梗曲」  ※膚(はだへ)
胡蝶蘭咲きのぼりをり妹が斜めにわれをふりかへるとき/安田申佳「冬の芥子」
昼視えぬ星のやうにと弟は蜻蛉の眼真綿に包む/柚花宏子「たまかぎる」  ※蜻蛉(せいれい) 眼(まみ)
早く行かう三日紅葉と言ふからね散り果てぬうちにと言ひつつ暮れぬ/朝倉圭子「丘の風道」
ちぎれたる首輪の真珠みな孵りさむく囀るこゑに目覚めつ/伊藤玲子「真珠母調」  ※孵(かへ)
泥靴の底に踏みたるあぢさゐの色 貶しめし者に反さむ/井上弦子「まぎれなく花」  ※貶(おと) 反(かへ)
「あなたが好き」「あなたが嫌ひ」「太陽が一杯」何でも言へる白き芍薬/草深俊子「涼しき言葉」  ※太陽が一杯(プラン・ソレイユ)
キューバまで行かなくていい僕のため準急青夜を突破してゆけ/柳島彰「いますこし鬱」
サフランサフラン擬きが朝ごとに夜ごとに較べあふ赤い肺/山本純子「冥婚」
締めむとするノブを内より引くちから風の仕業と安らぐなかれ/持丸雅子「曖昧母音」
半木の道あゆむとき青嵐胸をよぎりぬしづく落して/本庄吟子「憂愁園」  ※半木(なからぎ)
ぬられざるぬりゑの少女いつよりかドリアン・グレイを秘かに愛す/藤林和子「しろがねならぬ」
林檎と指 対応させつつ数ふ子の具象思考をいでざる明るさ/藤田博子「鬱金律」
雪に並べ売る鋤・箕・飴・棒鱈に雪ふりかかる雪ごと買ひぬ/須川よう子「落し文考」  ※箕(み)
吹かれゐるむらは夕昏氷魚色のセーターの目をくぐりくるかな/洲崎裕代「南木曾読書」  ※氷魚色(ひをいろ)
くちなしの白したたれば六月をきみ数学に懸けて惨たり/荻原裕幸「青年霊歌」
ぺらぺらの硫酸紙なる曇天がずつと覆つてくれるものなら/茅亮子「魚の裔」
とめどなき多弁の中にうづくまる花開かざる球根のごと/コージン・サカモト「未視は既視」
星座より一つの星はたちあがり首途の星を見送つてゐる/南静「心奔りて」  ※首途(かどで)
灯心草と呼び合ひて野に摘みゐしは点しみることなかりし遊び/井上美和「幻影」
モスクワのホテルに妻と昼を寝ぬ同室に閉所恐怖症の蛾/坂上一囀「新月の声」  ※寝(い)
撃たれたる鴨みひらきしままの目に冬田の餌は写されてゐむ/筑紫千寿「何を糺さむ」
(江畑實編『玲瓏 創刊準備号』、書肆季節社、1985年)

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