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Hello Sky Harbor

 「家中にお金を撒いてあるから財布はいらない」と不思議なことだけ言い残してプールに帰っていったひとがいたそうだ。なぜプールに?というと私が今すごく暑がってるからだそうだ……。そこまで書いてほんとうに外に出てみたのかも知れない。Sapporoの予想気温は19~24℃だそうだ。住所登録をしてないからいつまでもSapporoの予想気温だけがパソコンの隅にはびこる。今どうしても頭に浮かばない人名はドリュー・バリモア。もしくは雪。
 疲れというのではないけれど、足をためるような更新になってきてるだろうか(そうだったらむしろいい)。


 「心を持つおれはかつて一度も五月まで生き長らえず、/過ぎし日々には/ただ百度目の四月があるばかり。」(マヤコフスキー)。オリーブオイル煮かしぐれ煮かでさんまの缶詰をローソンの棚の前で買い迷い、毎日ぐずぐずしている足をいったんよそにしてみるといい。そうすれば少なくとも、転校生がすでにしゃべり始めていることは判るだろう。
 「のんのんびより りぴーと」を観て思わず胸に手をついてしまったのは、主題歌が流れると同時に、画面では一条蛍が真っ先に口をあけ、そしてなにごとかをそばにいるひとびとに向けて語り出しているところだった。その会話の内容はこちらには聴取できないということが、かえって蛍の声音の明るさを伝えてくれるようだ。画面の中でひとが語り出すのと同時に、それとはべつの声の主体による歌が聴こえてくる。不思議な感覚のかけ違い……たしかにひとつの明るい予感が広がる。
 歌とおしゃべり、その「聴取できない賑やかさ」という撞着語法はみずからをノートのように広げ、転校生の蛍の口からあふれるものをいま書き留め始めているところなのだろう。


 明るい予感……。もちろん「ファンタジスタドール」を忘れる訳にはいかない。ただ、いくつかのことはべつの場所で書いてしまってあるので、そこからひとつだけ引いてここに留めておけたらと思う。いつかまた違うかたちで思い直したり、書き直したりできるかも知れない。
 といって、明るい予感がそこかしこに転がってあるようなアニメからひとつだけ引くというのはいかにもむつかしい。私がカティアを偏愛するという理由だけで決めると、5話「ばたばたバイト はじめてのカティア」だろうか。お菓子代を得るためにドールたちがアルバイトをするおはなしだ(その裏ではうずめとかがみ、まないのチーム結成も進められていくけれど)。アルバイトの配達の途中、カティアがうずめの妹、みこと出会い、道行きをともにする。青空も。いや、書き損じたのじゃない。ほんとうにそうだ、ここでは青空がふたりとともに歩いていく。
 ゲームセンターで山田海洋が「オッケー! ゲームをやるぜ!」と宣言するシーンに続いて、画面はカティアとみこに切り替わる。青空をふたりの背後に容れながら、カメラは上から下へ。並んで歩くふたり。「カティアは不思議な人だね」「不思議?」。ふたりの歩みの速度のままカメラは電柱越しの青空を迎えている。「だって。見た目は同じなのに子供っぽいし、テレビカメラにあんなにはしゃいで」メロディアスなみこの感嘆、フレームから姿を外したふたり、そのみこの声だけが青空とともに伸びる一瞬だ。そうして今度は背後からの視点、ふたりの道行きの真ん前には三度目の青空がある。
 やがて場面は山田海洋の職業ドールたちによる襲撃に移るだろう。ところが職業ドールたちはカティアとみこに近寄ることすらできない……(ラフレシアの君によってそれはカティアのアビリティ「無自覚ラッキー」が発動したためだ、と説明が与えられる)。出会うことなくリタイアしたプチットの悲鳴にふたりは後ろを振り返るけれど、上から下へおりるカメラワークにより彼女の悲鳴はまず青空を介してふたりに聞き取られる錯覚がある。しいの実もまた、襲撃に失敗する。ヒヨコを乗せたベビーカーで突進する彼女は石に車輪を引っかけてふたりの頭上を飛んでいく。いや、ふたりに向かってというより、それこそ青空に突進して自滅したみたいだ。そう感じてしまうのはすでに私が「ふたりの青空」へ思い込みを投入しているせいだろうか。たぶん、そうなのだろう(冷静ぶってこんなことまで書きつけている。たぶん、だと?)。ただ、どうだろうか、カティアを心配して見守っていたうずめが、家々の立ち並ぶ路地の隙間……つまり青空がその姿を最小限に切り詰められる場所で踏み迷っているのを見たとき、得心してしまったのもたしかだ。この場面の青空の狭苦しさといったら! ああ、そこがいちばんふたりから遠い……と思わず口にしてしまう。
 配達の最後、カティアはその身に今日一日たくわえた青空の総量を解き放つ。みこを背負い、配達先の女性目指して空を跳躍していく。無自覚ラッキーの最も近くを歩いていたものこそ、今は紅色に染まったさっきまでの青空だったと、もう信じたい気持ちになっている。そう言えばカティア役の声優はその名を「徳井青空」というのだった(ふふっとせずにいられるだろうか)。
 「小鳥は落とし穴にはおちないものね」(「ふたりはミルキィホームズ」)。カティアとみこの道行きのそばにはこの言葉を置いておけば十分だったのかも知れない。無数の鳥を容れる空はむしろここではひとつの青い鳥となって、カティアたちの視界の内を外を出入りしている。

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