sell out(セルアウト)というスラングに馴染みないやつは検索でもしてみてくれ。で。カルト対ヒーロー、またはカルト的存在からヒーロー的存在へ、っていうまあまあ、まあまあまあよくある成功の図式をめぐって『パリのサタン』(エルネスト・ド・ジャンジャンバック)って本の解説に鈴木雅雄が面白いことかいてるというか、あらためて思い起こさせてくれたけどポピュラーミュージックの世界でもカルト(=どマイナー)がヒーロー(=どメジャー)に脱皮していく過程でsell out!asshole!とか言われる。単に「地下二階の同志」たちの巣窟から抜けて、たっぷりのレコード会社との契約金というアガリをもって「ガレージ」(ガレージだってベッドルームだってケツにincつきの、つまり企業なんだけどな)を出てったという結果だけでなく、売れたせいで喪った(とみなされる)要素が、売れたという結果を前にして今度は遡行的に換算される。その失せもの探しの度合いがでかいほどあいつらセルアウトしやがった!との弾劾が発言者に与える「旨み」も大きくなる(「俺たちはあいつらみたいにはなりたくない」「俺たちは魂を売らない、俺たちは本当の"音楽"をやってるんだ、金儲けのビジネスじゃなくてね」、もう十分だ……といって「セルアウトなんてしないという信念へのセルアウト一覧表」を編むいやみもまた、べつのカス作業だしな)。いや、それもどうでもよくて、sell outの弾劾的使用を逆手に取って自分たちのカルトぶりを強調する語用論もある。当然と言えば当然。WarhorseがSouthern Lordからリリースした、そしてたしか唯一のフルアルバム「As Heaven Turns To Ash」に貼ってあったステッカーには「the biggest sell out for DOOM METAL」とかいうYay!な文句が印刷されてた記憶がある。Doom Metal(ドゥームメタル)はヘヴィメタルという悪臭と膿の巣のようなジャンルのなかでもとびきりコアで、しかしダイハード(=しぶとい)で、それこそ「カルト」な(今となってはそれほどでもなくなってる筈ではあるけど)サブジャンルのこと。自ジャンルが最も敵視してきたメジャーレーベル/ヒットチャートへの身売りの身振りをそのままカルト愛に持ち帰ってきてる訳だ。もう一例。用法的に、より屈折し、即座に思い出せるのは"Hooker with a Penis"(Tool)の一節、「I sold my soul to make a record, dipshit, and you bought one」だろう。1992年にバンドが最初に出したEPのころからの狂信的なファンが、お前らsell outしちまったよな?とふっかけてくる様子を描写したあとコーラスが来て、2ndヴァース:あんたが俺の名前を知るよりずーっと昔に俺は魂なんて売り飛ばしてんだよ、レコードを作るためになクソカスくん、そしてあんただってそのクソカスレコードをもう買ってんだよ。このdipshitをrecordとyouのどっちにもかかるように聞いておく。エネマとアニマをÆnimaという題に合成させたこのバンドのシンガーらしく「I sold my soul to make a record」というラインが汚辱にも清新にも振れうるように。