女の子対男の子のラブコメということでは、2018年、私はこれです。わがままハニイホリック。そんな読んでないけどねラブコメ。下着ばんばん出まくり肉々しまくり食い込み見せつけまくりで眼つきのワルさが掲載誌(チャンピオン)。陥れ系、というには相手を陥れたつもりがあっという間に陥れられちゃって、言葉はいつだってまっすぐ。私、ラブコメはまっすぐさをナメないのがすきだなあ……やっぱり。自信と傲慢、変われること、さらけだせること。
 まといくんの白ソックス最高なのはもちろんだけどハニイの髪のラクガキ王国ぶりを見て!!!って感じ。ハニイ、髪のトーンの上から白ぬきで☆の落書きがばらまかれてるのね……あればあるだけうれしいもの。


甘木唯子のツノと愛 (ビームコミックス)

甘木唯子のツノと愛 (ビームコミックス)

 2010年から17年までの短・中編をおさめたもの。初期の「透明人間」の手紙の文体など「文学」の懊悩にやはり譲歩しすぎているのではないかと思ったし(ただしその返答で「君に」を採用した心は、思い切っていただろう)、「IDOL」「へび苺」も代理の愛や入れ替わりへの欲望とその困難といったモチーフで読まれてしまうものかも判らない(でも「IDOL」の最後のコマをそこで切ることで後に開くしかたには私自身態度を決めかねつつも、好感を持つ)。
 しかし。線についてふれなければ……そうだろう? 2017年の表題作は危険な言い方をすればだいぶキャッチアップされて、キャラクターの上まぶたと眼球との間の余白が広く与えられ、眉毛もスムーズな一本のぴんと伸びる線状性が意識されていると思う。それはつまり私の好みではある……けれど……初期の筆致の極端な曲がり癖、曲がり愛は、たとえば棒立ちである筈の子のそえられた腕さえ波立つように輪郭をとられている。そして、まぶたとぴったりくっついた極小の眼(点以上の大きさであることにかかわらず、この顔面積上でこのサイズはすでに感覚として極小と呼べる)。それは必ずしも私の好みではない、ということなんてどうでもいいだろう、自分の好みなどどうでもいいだろう、この線の前ではと思える。

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(久野遥子「透明人間」p.14、『甘木唯子のツノと愛』、BEAM COMIX、株式会社KADOKAWA、2017年)

 腕もそうだし、おでこ、顔のふちどりもときに瓢箪のようでさえあり(横顔にそれは顕著となるだろう)、眉はと言えばすっと直線でかかれたコマを探すほうがむつかしいほど、つねにもどかしく額の上を這っている。このもどかしさの質をキャラクターの「不安さ」に送り返してしまえば、ただちにそれもまたひとつの類型的な解読格子の世話になるほかないのではないだろうか。
 表題作「甘木唯子のツノと愛」はそして、表紙絵から即座に思い描いた私の勝手な想像からふりかえると、もっと遠いところまで行ってくれそうな期待をすなおに叶えてくれるものではなかったゆえに、次の作品も強く読んでみたい気持ちが高まった。


 博士ことアインシュタインに惹かれて。高橋葉介をどこか感じさせる人形性と毛織物性のミクスチャー。この構築的に横長な瞳の容量を十分確保した上で、ほっぺたのふにふにも全力で強調したいという思いが、このスライミーな顔全体のバランスを達成している。首はほとんど紐の細み。こういうバランスへの思い、私、よく判る……。何様と言われようとこういう造型にどうしてもらぶ、ということね。

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(宮永龍『アインシュタインの怪物』1巻p.17、Gファンタジーミックス、株式会社スクウェア・エニックス、2016年)

 風を必要とせず大きく広がる服飾の麗しさはもういろんなひとが言っているだろうと思う。船、洞窟、インテリアのかきこみ。その粘菌、茸、皺、枯れ木、斑点、あぶく、といった浸潤の模様は、たしかに設定だけ見れば際立ったものはないこのお話の内容を越えて遠い海を先導してくれている。