「VA-11 Hall-A」と「2064: Read Only Memories」

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 バーテンダーになってカクテルを客にだして話を聞くADV? そんなゲームのなにがたのしいの……????とプレイする前は気持ちが遠巻きでいました。チェックしたのは去年だけど10分くらいプレイしたとこでふうん、といったん止めてたのを最近一気に最後までやって、これは、とってもおもしろかったです。カクテルってすごくむずむずする存在でべつに興味ないし思い入れもなかったからさあ……。このゲームプレイしたあとでも現実地球世界のカクテルにはぜんぜん興味わかないし。でもこのゲームでお客さんにだせる「ふもふもドリーム」や「フリンジウィーバー」の愛らしさって、ふしぎです……。
 苦しいくらいどうしてそんなに親切なのっていうボス(2064にもゲストでいました、わあ……!)、セックスワーカーをたのしんでるドロシーのピンク色な向日性、身長高そうでいいな~~~……っていうアルマ、あのペアあのペア、と、ときめくキャラクターのエピソードを数え上げたいところだけど、プレイヤーキャラのジルがなによりよかったのかな。客に対する受け答えの感じ、そんなですけど。なに考えてるかプレイヤーにははっきりとつかませなくて。言葉の上では明快で、受け答えも聡明なんだけれど、それが彼女の内心の辻褄合わせへ寄与するかというとあまりそうでもなさそうで、っていうかね。そういう主人公への近寄れえなさの部分に好感をもったんだと思います。でも、オーグメンテッドアイから配信されるプロレスのニュース見ながら「プロレスにちゃんと興味があったらもっと面白く読めたのかな」みたいなことぽつっと思ってるとことか……私もまさにカクテルに対してそう思うから。そういうとこがゲームをプレイし終えたあとでもジルというひとの感じ方として残る筈です、私に。あと胸の大きさネタがたまにでてくるんですけど(アルマとかステラ相手に)このゲームのなかだと私は不愉快とは思わなかったな。それは、「ほかに下ネタがめっちゃ多いから」ではないんだと思います。なんでしょう、からだの話題もそれぞれのキャラクターの生活に根を下ろした語りに沿ってるからかも知れない。全部が全部ではないにしても。
 リソース管理ゲームとしては電気料金とか家賃代とか後半ひやひやものだった。テクノポップ、産業ロック、ニューウェーブとかまぜまぜな音楽も気に入っちゃったけれど、カクテル作業のときのSE選びがイライラになりそうでならない、癖になる絶妙なもの……。日本版のローカライズ担当された方の裏話(https://twitter.com/i/moments/934447576316755975)は一通りプレイしたあとででも読まれるとよいかと思います。あとジルの携帯の画面かわいいよね。

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 「VA-11 Hall-A」のあとやったのが「2064: Read Only Memories」です。ほんとうはここで並べて挙げるのには後ろめたさがあって、両ゲームのデベロッパー同士での座談会企画(http://jp.automaton.am/articles/interviewsjp/20171122-58152/)もあったけれどそういう「精神的姉妹」みたいなところで注目を集めたりもしてるゲームをそのままこう……………伝わんないですかね。ほんとうはばらばらに取り上げたかったな、結局私のほうでも同じ時期にプレイしたのは事実なのでしかたないけれど。

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 「VA-11 Hall-A」のほうでクリスティーン・ラブの名が軽く引用されてたのはふうん、だったけれど、「2064: Read Only Memories」のほうがプレイ中の感触として「Digital: A Love Story」なんかに近いものをおぼえました。捜査のフレーバーとか。あくまでどちらかというと……ということでは。
 おはなしの中で繊細に扱いたいであろうマイノリティーの権利やAIの自我といった問題にキャラクターの口を通してアプローチさせる部分ではどうしても説教臭いものがあったり、会話の内容がみなさんそれほど脇道に逸れてくれなかったり、というむつかしさは残しつつ、それだけに重く扱われる義務をどこまでも忘れて読むことがゆるされるものたち――つまり看板やコーヒーや建物といったオブジェクトとのやりとりが光って見えます。このゲーム、ポイントアンドクリック方式で進める一種の探偵ものですので「見る」「調べる(触る)」「話す」コマンドがあるのは、はーい、なんですけど、序盤で手に入るヘッドフォンがいいんですよ。これを使って調べたいオブジェクトの、まあ、なんというか内側のvoiceを聞けるのです。ヘッドフォンを取り出して相手オブジェクトに当てる、まるで聴診器みたいに……というのかな。これは「話す」というコマンドとは独立している訳です。返ってくるテキストもぜんぶ違って、推理を進める上では寄与しない、「へえ」「ふうん」「ふふっ……」程度のリアクションなのが大事です。植物とかデスクとかはもちろん、NPCに対しても使える。「聞く」にかぎらず、なにかにアクションを試みるとそれに応じていろいろな言葉が返ってくる、というののの原初的なたのしみをあらためて教えられました。
 キャラクターの台詞がフルボイスなのも効いてると思います。画面がこういうごつごつしたピクセルアートであるだけに。そしてこれは通常は欠点ととられる筈なんですが、少なくとも私がsteam経由でプレイした日本語版はテキストに文字欠けが頻発しちゃってます。たとえば原文は「嬉しいです」であろうテキストが「しいです」と表示される。そして、それがかえってこのゲームに対しては妙に親和的なんですよね……。文字が欠けてるのが当たり前、ていうのがこういう場所では悪くなくて。私はそう思えたので最後までそういう部分でのストレスはなかったですね。セーブするのにいちいちデータ名つけないといけないとか、文字スピード関係のまだるっこしさとか、そういうめんどうさはいろいろあるのはたしかなんですけど。

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 プレイし始めて最初にくす、としたところ。コンピューターの操作が苦手なAIっていい、チューリング